残業代請求とは、ざっくりといえば、
- ○○時間働いたから、
- その時間分の(割増)賃金が請求できるのに、
- 実際にはその賃金が払われていない!
…というときに、支払われるべき賃金と実際に支払われた賃金の差額を請求するものです。
「○○時間働いた」という部分は正しく残業代請求の出発点になるものですから、裁判ではよく争いになります。その一つが、「昼休み」など形式的には休み時間とされている時間に働いた場合の扱いです。
この記事では、どういった場合に「休み時間」中の労働が残業代の支払い対象になるのかについてご紹介します。
目次
「休み時間」が労働時間になるとならないとでは大違い
たとえば、所定労働時間が9時から18時まで、そのうち12時から13時までが「昼休み」と定められている職場で、月に23日働く場合のことを考えてみましょう。
この職場に勤めているAさんは、「昼休み」にも仕事をせざるを得ず、しっかり休めなかったという不満をいだいています。
この場合、この12時~13時の「昼休み」に働いたことが残業代の支払い対象*1となるのであれば、Aさんは1日あたり1時間、月に23時間の残業(時間外労働)をしているということになります。しかし逆に「昼休み」中は働いても残業代の支払い対象にはならないのだとすると、Aさんはいわば23時間分「タダ働き」をしたということになります。
これ、すごく大きな違いですよね。
*1:「労働基準法上の労働時間」といいます。
労働時間に当たるかどうかは、実態をみて判断される
裁判所は、ある時間が残業代の支払い対象となるかどうかについては、
- 「休み時間」という名称がついているかどうか
ではなく、
- 使用者の命令に従って動かなければならない状態*2であったかどうか
という実態をみて判断するとしています。もうすこし具体的にいうと、裁判所では、
- 何らかの意味で業務に関係する行為をすることを、
- 使用者から明確に、あるいは暗黙のうちに指示されていた
ような場合には、「休み時間」という名称がついていても、残業代の支払い対象であるとして判断されます。
*2:「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている状態」といいます。
どういう場合であれば「休み時間」が労働時間になるのか
この考え方に従うと、次のようなことがいえます。
まず、使用者が明示的に業務を命じていた場合、たとえば、
- 休憩時間中に来客当番として事務所待機になっているような場合
には、そのような時間は残業代の支払い対象と判断されます。また、明示的な業務指示がなかったとしても、
- Aさんが処理すべき業務が非常に多く、その業務をこなすためには昼休みを使わざるを得なかったというような場合
には、その業務を昼休み中に行うことについて使用者から暗黙のうちに指示があったとか、あるいは少なくとも黙認しているとかという事情があれば、残業代の支払い対象と判断されることになるでしょう。これに対して、
- 使用者が明確に「仕事は禁止、休憩をとりなさい」と指示をしていた場合
には、その時間中に仕事をしたとしても、原則としては残業代の支払い対象にはなりません。
悩ましいのは、
- 会社からは「休憩をとるように」といわれつつ、休憩をとっていてはとてもじゃないけど終わらない量・質の仕事を命じられていた、という場合
です。
こういった場合には、先例となる裁判所の判断なども踏まえつつ、実際に命じられていた仕事の量や質、日々の業務の状況を分析し、検討をしていくことが必要になります。
ただ、「過重な労務を命じても形式的に『休憩をとるように』とさえ述べておけば、やむを得ず労働を行ったとしてもそれは労働者の自己責任になる」などという結論は到底容認できません。実際に仕事をせざるを得ない状況があったのであれば、残業代の支払いを認めさせるべく、是非一緒に頑張りましょう。
あなたの「休み時間」について、まずはご相談ください
形式的には「休み時間」が設けられていても、実際には全然休憩を取れない、という事例は必ずしも少なくありません。そういった場合には、「休み時間」中の労働に対しても残業代を請求できる可能性は十分にあります。
心身の健康を害さないためには、そもそもは「休み時間」にはきちんと休憩をとれるようにすることが一番大切です。しかし、どうしても休みが取れない場合には、せめてもの対応として、残業代の支払いが適正になされなければなりません。それは、結局のところ長時間労働を防ぐことにもつながります。
仕事中に休憩が取れず悩んでいる方は、是非一度ご相談におこしください。
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